【1巻〜12巻まで網羅】『ざつ旅』漫画の旅と成長を完全レビュー！

『ざつ旅 -That’s Journey-』は、SNSのアンケートを使って気ままな旅に出る新人漫画家・鈴ヶ森ちかの旅と成長を描いた作品です。

本記事では、コミックス第1巻〜第12巻までを一気に振り返り、それぞれの巻で彼女がどのような出会いや変化を経験したのかをまとめてご紹介します。

ちかの“ざつな旅”がどのように彼女自身を、そして読者の心を動かしていったのか、その魅力に迫ります。

第1巻〜第3巻｜旅の始まりとちかの初成長

『ざつ旅』の物語は、主人公・鈴ヶ森ちかがSNSのアンケートで旅先を決めるという新鮮な設定から始まります。

漫画家として伸び悩んでいた彼女は、現実からの逃避にも似た動機で旅に出る決断をします。

しかし、その“ざつ”な選択こそが、人生を動かす大きな一歩となっていきます。

初めての一人旅とSNSアンケートの導入

第1巻では、福島県・会津若松を訪れる様子が描かれます。

赤べこや七日町通りといった実在の観光地が、驚くほど丁寧に描写されており、アニメや旅行ガイドのような臨場感があります。

旅の計画はSNSのアンケート任せというスタイルですが、無計画であることが逆に新しい発見をもたらします。

出会いと小さな自信の芽生え

旅先で出会う地元の人々との交流は、ちかにとって大きな刺激になります。

観光客扱いではない自然なふれあいが、自分自身の存在を肯定される感覚につながっていくのです。

何気ない会話や、駅でのすれ違いすらも、彼女にとっては大きな「発見」として心に刻まれていきます。

漫画表現との接続と“ざつ旅”の原点

この初期の旅で感じたことは、ちかの創作活動にも少しずつ影響を与え始めます。

描きたいものが“日常の延長”にあると気づいた彼女は、少しずつ表現に対する迷いが和らいでいきます。

「旅をする理由」や「描く意味」はまだ見つかっていませんが、動き出すことの大切さを知った巻として、大きな意味を持つエピソード群です。

第4巻〜第6巻｜出会いと絆がもたらす変化

物語が進むにつれて、ちかの旅には新たな出会いや深まる人間関係が加わっていきます。

一人旅を基本としつつも、旅先でのちょっとしたつながりが生まれ、彼女の中に芽生える感情の変化が丁寧に描かれていきます。

孤独と向き合うことがテーマだった序盤から一転し、他者とのやり取りが彼女の成長に不可欠な要素として現れてきます。

共感と気づきがもたらす変化

旅の中で出会った人たちとの会話を通して、ちかは自分では気づかなかった視点や考え方に触れていきます。

時には厳しい指摘もありますが、それらを受け入れていく過程で、自分の弱さや迷いを認める強さを身につけていきます。

このあたりから、ちかの言葉や行動には少しずつ芯のようなものが宿り始めます。

旅が創作に与える影響

旅先で見た風景や、出会った人の言葉が、そのままちかの漫画作品に反映される描写も増えてきます。

インプットからアウトプットへの流れがより明確になり、旅と創作が一体化している感覚が読者にも伝わってきます。

この段階で、彼女は「旅を続ける理由」を模索しながらも、その行動に確かな意味を見出し始めているようです。

絆が支える心の成長

再会を果たす人物や、旅の中で再び現れる場所など、ストーリーに緩やかな“縁”が生まれてきます。

こうした描写が、ちかの心の成長をよりリアルに、そして温かく感じさせてくれます。

他者との絆が、彼女に安心感と新しい勇気を与える——この巻の大きな見どころのひとつです。

第7巻〜第9巻｜旅のスタイルが多様化する

この巻から、ちかの旅はより自由でバリエーション豊かなものへと変化していきます。

一人旅からグループ旅、そしてバイクを使った移動など、旅のスタイルそのものが進化を見せます。

それはまるで、ちかの内面の変化と呼応するように、表現の幅も広がっていくようです。

移動手段の変化がもたらす視点の変化

特に印象的なのが、バイク旅の描写。

歩きや電車とは異なり、風景の切れ方や距離感の違いが新鮮で、ちか自身も「自分の足で風を切って旅する感覚」に大きな刺激を受けます。

それと同時に、新たな緊張や責任感も生まれ、旅の質が変わっていく様子がリアルに描かれています。

仲間との旅で広がる感情の幅

ちかは、これまで一人で向き合ってきた旅に、仲間と行くことで新たな楽しさを発見していきます。

笑い合う時間もあれば、ペースの違いや考え方のズレに戸惑う場面も。

それでも、「一緒にいるからこそ見える景色」があることに気づき、旅は“共有”というキーワードを得ていきます。

ちかの旅が“他者を受け入れる旅”へ

この巻では、旅の途中でちかが旅先の文化や人の考え方に戸惑いながらも、それを柔軟に受け止めていく描写が多く見られます。

つまり、旅が「自己完結」から「相互理解」へとシフトしているのです。

彼女の表情や言葉遣いもより穏やかになり、視野が広がっていることが読者にも伝わってきます。

第10巻〜第12巻｜旅の終着点とその先へ

物語はいよいよ終盤へ。旅を通じて多くを経験してきたちかは、自分自身のあり方や“旅をする理由”と向き合うフェーズに入っていきます。

もはや“ざつ”という言葉が表すのは「適当」ではなく、「自由」や「柔軟さ」になっていることに気づかされる、そんな巻構成です。

各話に込められたメッセージ性も強まり、読者にとっても“心に刺さる旅”としての印象が深まっていきます。

旅の答えはどこにある？

10〜12巻では、「なぜ旅をするのか」という問いが、ちか自身の言葉で繰り返し語られます。

その中で、“旅をすること”そのものに意味を求めず、旅の中に生まれる感情や発見を大切にする姿勢が浮かび上がります。

答えを探すのではなく、歩きながら見つける——そんなメッセージが込められています。

旅の記憶が創作を支える

ちかは、自身が旅を通じて見てきた風景や感じたことを、より深く漫画の題材として昇華し始めます。

旅＝創作の源泉としての位置づけが明確になり、彼女の描く世界には確かな説得力と“実体験の重み”が加わります。

旅と漫画、どちらも彼女にとって“自分を表現する手段”であることが、読者にも強く伝わる構成です。

「また旅がしたくなる」締めくくり

12巻では、ある種の「旅の終わり」や「節目」が描かれますが、同時にそれは新たな旅の始まりを予感させるラストでもあります。

ちかが得たものは、旅先での思い出だけではなく、日常の中にある小さな冒険へのまなざしだったのかもしれません。

ページを閉じた後、きっと誰もが「自分も旅に出てみたい」と思える、そんな魅力に満ちた終盤です。

【1巻〜12巻まで網羅】『ざつ旅』漫画の魅力と今後への期待まとめ

『ざつ旅 -That’s Journey-』は、SNSを使って旅先を決めるという“ざつ”なスタイルを貫きながらも、驚くほどリアルで温かな旅の体験を描き続けてきました。

全12巻を通して、主人公・鈴ヶ森ちかの心の成長と、出会いの豊かさが丁寧に積み重ねられており、読むほどにじんわりと心が満たされていきます。

ただの旅行記でもなく、成長譚でもない、“ざつ旅”ならではの空気感と余白が、本作最大の魅力です。

“ざつ”な旅が教えてくれる自由さと優しさ

ちかの旅は決して華やかでも、効率的でもありません。

でも、自分のペースで歩き、迷い、誰かと交わる——その姿勢にこそ、今を生きる私たちが忘れかけていた価値が宿っています。

「旅って、自由でいいんだ」というシンプルな気づきが、読後の余韻として優しく残るはずです。

今後の続刊やアニメ展開にも注目！

2025年春にはTVアニメ化もスタートし、原作の魅力がより多くの人に届くタイミングを迎えました。

アニメでは実際の風景描写がさらに引き立てられており、旅の臨場感が倍増しています。

今後の続刊や、新しい旅のかたち、ちかのさらなる成長など、原作ファンにも新規ファンにも楽しみが尽きない展開が続いていくことでしょう。