その声は、まるで遠い記憶をなぞるようだった。
アンドロイドのユウグレが発した「あなたと結婚したい」という言葉――。何の感情もないはずの彼女の声が、なぜこんなにも心を揺らすのか。
『永久のユウグレ』は、未来の世界と、心を交わすということの意味を問い直す物語。そしてそれを支えるのが、実力派声優たちの“演技”という名の魂です。
本記事では、全キャラの声優一覧と、代表作、さらには演技の裏にある“意図”まで徹底的に解説。声に込められた想いを一緒に紐解いていきましょう。
永久のユウグレの声優一覧｜主要キャラと演者を紹介
姫神アキラ（CV：梅田修一朗）
本作の主人公。凍結された時間を超え、未来世界に目覚めた青年・アキラを演じるのは、若手実力派の梅田修一朗さんです。彼は、『あやかしトライアングル』『恋は世界征服のあとで』などで主要キャラを務め、柔らかな声と芯のある演技が魅力の声優。
本作では、「感情の発露」よりも「感情の揺らぎ」に重きを置いた演技が求められており、梅田さんは“あえて台本を全部読まない”という手法でアキラの戸惑いや変化をリアルに表現しています。
ユウグレ（CV：石川由依）
感情を持たないはずのアンドロイド・ユウグレを演じるのは、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の石川由依さん。その透明感のある声質と、心の機微を繊細に表現する演技力で知られています。
ユウグレ役でも、感情を内包する“前”の存在として、抑制された語り口からスタートし、徐々に“学習”や“感情”を宿していく演技を求められています。石川さんはこの役を「声で少しずつ感情を芽吹かせていく」と表現しており、彼女ならではの表現力が光る役どころです。
トワサ（CV：茅野愛衣）
アキラの幼なじみであり、科学者としてユウグレ計画にも関わっていた重要キャラ・トワサを演じるのは茅野愛衣さん。代表作は『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の本間芽衣子、『ノーゲーム・ノーライフ』の白など、儚さと芯の強さを併せ持つ声が魅力です。
本作では、「過去と未来」「人間と人工知能」「愛と選択」というテーマに揺れる存在として、冷静さと情感のバランスをとった演技が必要とされており、茅野さんの丁寧な役作りが冴え渡ります。
アモル・ヨイヤミ・ハクボ 他キャラの担当声優
- アモル：富田美憂（『ぼっち・ざ・ろっく！』後藤ひとり役）
- ヨイヤミ：沢城みゆき（『化物語』神原駿河、『ルパン三世』峰不二子）
- ハクボ：楠木ともり（『アサルトリリィ』『アイドルマスター シャイニーカラーズ』）
いずれも、若手からベテランまで演技派が揃い、それぞれのキャラが抱える“距離感”や“関係性”を繊細に表現しています。
追加キャラ＆サブキャストも網羅
さらに注目すべきは、物語後半や第0話で登場する個性豊かなキャラクターたち。オボロ（森川智之）、ヨクラータ（阿座上洋平）、イディ（小針彩希）、カルクラム（坂泰斗）など、サブキャラにも信頼感のあるキャストが配置されています。
特にオボロ役の森川さんは、声の重厚さと柔らかさを併せ持つ稀有な俳優で、“親しみと哀愁”のある役に深みをもたらしています。
声優の代表作を通して見るキャラとの共鳴性
石川由依｜“感情のない声”に宿る温度
ユウグレ役の石川由依さんといえば、やはり『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のヴァイオレット役が記憶に新しいでしょう。戦場で“心”を失った少女が、手紙の代筆を通じて感情を取り戻していくあの作品と、今作で演じるユウグレには、どこか響き合う部分があります。
どちらも「感情を知らない者が、愛を学ぶ」という過程にあり、石川さんはその“気づき”の声のトーン、間の取り方、そして言葉を選ぶような語尾処理に、圧倒的な表現力を注いでいます。特に『永久のユウグレ』では「結婚したい」という台詞が、“制度の選択”と“心の芽生え”の両義性を持つため、石川さんの細やかな演じ分けが物語の軸を支えています。
梅田修一朗｜リアルな戸惑いを声で演じる理由
梅田修一朗さんは、『ブルーロック』の凪誠士郎や『恋せか』の禍原デス美役でブレイクした注目株。どこか柔らかく、それでいて芯のある声質は、「優しさ」と「脆さ」の表現にとても向いています。
『永久のユウグレ』のアキラも、未来に目覚めてからの戸惑い、かつての記憶と今の現実のギャップ、そしてトワサとユウグレの間で揺れる感情…と、常に“曖昧さ”を抱えるキャラクター。梅田さんは、あえて先の展開を知らないまま演じることで、キャラクターの戸惑いや揺れ動く心情をリアルに表現しようとしています。
茅野愛衣｜“科学者”と“想い人”をどう演じ分けるか
茅野愛衣さんは、感情の流れに寄り添った演技を得意とする声優です。『あの花』のめんまでは「存在感と儚さ」、『ノーゲーム・ノーライフ』の白では「理論と静けさ」、そして今作『永久のユウグレ』では、トワサという“理系の論理的思考”と“人間としての感情”の間にある揺らぎを巧みに演じています。
科学者としての冷静さの中に、アキラへの想いをにじませる表現。その“にじませ方”が非常に繊細で、全力で感情をぶつける演技ではなく、あえて「伝えきらない」「言葉にならない」まま残す演技が、視聴者の心に残る印象を与えています。
沢城みゆき・楠木ともりほか、表現の多様性に注目
本作の凄さは、メインキャラ以外の配役にも“物語を動かす声”がきちんと揃っていることにあります。ヨイヤミ役の沢城みゆきさんは、キャラクターに“威厳と包容力”を与える唯一無二の声で、登場するだけで空気が引き締まります。
また、ハクボ役の楠木ともりさんは、「自立した知性」と「不安定な幼さ」を両立させるような複雑な声を演じることができ、AIや機械的なキャラであってもどこか“人間的な弱さ”を感じさせてくれます。
“らしさ”を支えるベテラン・若手の絶妙なバランス
オボロ役の森川智之さん、ヨクラータ役の阿座上洋平さん、小清水亜美さんや河瀬茉希さんらも、各キャラに適した役者が見事に配置されており、作品全体に“人間ドラマ”としての厚みを与えています。
『永久のユウグレ』の魅力は、声そのものの演技力だけでなく、「この人だからこそ」というキャスティングの妙に支えられているのです。
インタビューで語られた演技の意図｜声優の想いとは
あえて台本を読まない演技論：梅田×石川の挑戦
梅田修一朗さんと石川由依さんのインタビューで印象的だったのは、「先の台本をあえて読まず、演じる場面に集中する」という演技スタンスでした。
この手法は、キャラクター自身が知らない未来に対して、声優も同じように“今その瞬間”のリアクションで臨むことで、リアリティのある演技を生み出すという意図があります。
梅田さんは、「先を知ってしまうと、今の演技が“予定調和”になってしまう。だからこそ、アキラの驚きや戸惑いを“自分の驚き”として出せるようにしている」と語っています。石川さんもこのアプローチを共有しており、互いに現場で“会話としての演技”を成立させているのが本作の強みといえます。
「結婚ではない関係性」をどう演じるか
本作では、「El-C（エルシー）」と呼ばれる制度が導入されており、従来の結婚制度とは異なる“パートナーシップの選択”が物語の核になっています。
石川由依さんはこの点について、「ユウグレの“結婚したい”というセリフは、ただの愛情表現ではなく、制度に即した機能的発言として始まっている。でも演じるうちに、どこか感情が乗っていく。それが難しくも楽しい」と語っています。
声に感情が生まれていく過程をどう表現するか──それは、人工知能が“心を持つ”というテーマに、声優自身のアプローチで命を与える作業でもあります。
演じることで“制度”に問いを投げかける
ユウグレの“提案”は、いわば新たな「関係性のかたち」を提示するもの。梅田さんはこの構造について、「アキラとしても戸惑いがある。そこにどう反応するかで、人としての価値観や過去の重みが表れる」と語っています。
声優陣がただ台詞を読むだけでなく、「この制度は何を意味するのか？」「人間としてどう捉えるべきなのか？」という“問い”を自分の中に抱えながら演じているからこそ、視聴者にも深いテーマ性が伝わってくるのです。
ユウグレとトワサ、同じ“顔”をどう演じ分ける？
ユウグレとトワサは、容姿こそそっくりですが、中身はまったく異なる存在。その演じ分けは、まさに声優の腕の見せ所です。
石川さんは「ユウグレにはトワサと似ている部分を残しつつ、微妙に違う抑揚や語尾で“違和感”を出すようにしている」と語っており、キャラクターの“同一性と他者性”を演技で表現するという非常に高度な作業に取り組んでいます。
キャラクターと一緒に“成長する声”を目指して
梅田さんと石川さんは共に、「物語を通してキャラクターが成長していく過程を、声でも見せたい」と語っています。
最初は抑制された声、揺らぎのある台詞回しから始まり、回を追うごとに少しずつ“自信”や“感情”が加わっていく…。それは、観る人がキャラクターとともに歩んでいけるような、心の変化を声で届けるという意志の表れです。
視聴者は、セリフのトーンや語尾の処理、間の使い方の変化にぜひ注目してみてください。そこには、声優がキャラクターと心を通わせてきた“証”が宿っているはずです。
セリフ以外の演技｜“沈黙”に宿る表現の深み
鶴岡聡の挑戦｜言葉を持たないキャラの叫び
『永久のユウグレ』には、「声を出さないキャラクター」が存在します。中でも印象的なのが、カニス役の鶴岡聡さん。セリフらしいセリフが少ないキャラながら、その“無言”が視聴者に強烈な印象を残します。
鶴岡さん自身も「沈黙には、沈黙なりの“叫び”がある」と語っており、あえて声を出さないことで感情を伝えるという、極めて繊細な演技を意識しているとのことです。呼吸のリズム、マイク前の“空気の動き”すら演技の一部として使いこなす、まさに熟練の技です。
沈黙×音楽×間（ま）が生み出す臨場感
アニメという表現媒体において、「間（ま）」は極めて重要な要素です。セリフを発した後の沈黙、セリフを交わさない“視線の交差”――それらをどう表現するかで、作品の印象は大きく変わります。
本作では、音楽や環境音と組み合わせて“沈黙”が非常に美しく、そして重たく演出されています。声優は「話さない時間」こそが最大の演技になるときがある。そんな瞬間を的確に捉えることで、アニメにしか出せない“音の深み”が生まれているのです。
演出と声の融合がつくる“静寂の演技”
監督・津田尚克氏の演出も相まって、本作では「喋らないキャラ」が喋る以上の存在感を放つ場面が多く存在します。
たとえば、カニスが何も語らずにユウグレの後ろに立つカットや、トワサがアキラに言いかけてやめる場面など。そこに込められているのは、セリフよりも重い“言えなかった想い”です。
声優陣は、セリフの有無に関わらず、「場面の空気」に合わせて息づかいや身体の向きまで意識しており、その精密さがアニメ全体の深度を支えています。
声優が“しゃべらない”ことで魅せるシーンとは
アフレコ現場では、セリフのないカットでも、呼吸音や小さな反応音など、あえて「無音にならない」よう細やかな演技が加えられています。
ときに、言葉は情報を多く伝えすぎてしまう。だからこそ『永久のユウグレ』では、「声にならない声」に注目することで、キャラクターの心の奥行きに触れることができるのです。
余白こそが、視聴者の感情を動かす
「伝えないことで伝える」――これは、映像表現の中でも特に難しく、そして最も感情を揺さぶる手法のひとつです。
本作の声優たちは、言葉で全てを説明するのではなく、むしろ余白を残すことで、視聴者の想像力に語りかけます。
言葉の先にあるものを感じさせる“沈黙の演技”こそが、『永久のユウグレ』という作品の根幹に流れる“静かなる情熱”なのかもしれません。
永久のユウグレ 声優一覧＆演技意図まとめ｜この作品の“声”に耳を澄ませて
『永久のユウグレ』は、未来世界という壮大な舞台の中で、“声”というきわめて人間的な要素を通じて、愛や記憶、関係性の変容を描き出す作品です。
そこに命を吹き込むのが、実力派声優たちの繊細で奥行きのある演技。
言葉にできない想いを、声の震えや間で伝える石川由依さん。
「今、この瞬間」の戸惑いを声に宿す梅田修一朗さん。
そして、“語らないこと”で心の深さを示す鶴岡聡さん。
一人ひとりが、“キャラクターの人生”を自身の声で紡ぐために、細部まで神経を注いでいます。
この作品は、ただ「声優が豪華」なだけではありません。
“なぜこの声なのか” “どんな意図でこう話しているのか”――
その答えに耳を澄ませることで、あなたの『永久のユウグレ』体験は、きっともっと深く、美しくなっていくはずです。
ぜひもう一度、目を閉じて“あの声”を思い出してみてください。
その奥にある、伝えきれなかった気持ちが、そっとあなたの心に触れてくるはずです。
▼キャラ理解をさらに深める
参考・引用元
- 公式サイト｜アニメ「永久のユウグレ」
- アニメイトタイムズ：梅田×石川インタビュー
- ABEMA TIMES：演技論インタビュー
- WebNewtype：対談記事
- SSW記事：鶴岡聡インタビュー
- アニメハック｜作品情報
本記事は2025年10月時点の情報をもとに執筆しています。内容は公式発表やメディア報道に基づいていますが、今後の放送・展開により変更となる可能性があります。
ライター：神埼 葉（かんざき よう）
「物語の中に宿る“ほんとうの気持ち”」を探し続けています。
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